日本は地震大国であり、ここ数十年で各地で大きな地震が発生しています。
そして、その度に、道路やガス、水道、電気などのライフラインが破壊されるだけではなく、多くの家が倒壊・半壊し、私たちの日常生活を奪ってきました…
こうした過去の大地震を教訓に様々な建築技術が開発され、住宅の耐震性能は飛躍的に向上してきました。
しかし、耐震済みの建物でも、経年劣化が進めば、必ずしも安全とは言えない状況が生まれてしまいます。
そこで今回は、初心者の方や誰でもできる、自己耐震診断のやり方を紹介していきたいと思います。
耐震補強の大まかな流れ
防災リフォームの中でも、特に重要なのが耐震補強の工事になります。
耐震補強を行うには、まず「耐震診断」を行い、現在の建物の状態を確認します。
耐震診断には、一般診断と精密診断があり、通常は一般診断だけで済みます。
一般診断の流れとしては、設計図書や増改築の有無などの情報を集める予備調査、実際に建物を目視し現況を調査する目視調査、そして調査結果を専門家が診断して、建物の耐震性能を計算する耐震性能構造計算の3段階で進めます。
●予備調査・現地にて打ち合わせ
基本的な項目の確認
◎設計図書の有無
◎築年数
◎増改築の有無
●現地にて目視調査
◎地盤、地形、基礎の状況
◎屋根葺き材料
◎柱頭、柱脚の固定状況
◎床の構造材の種類
●現状の耐震制度の構造計算
耐震診断の結果、耐震性能の不足が指摘された場合には、その不足を補う「補強計画書」が作成され、この計画書に沿って補強工事が行われます。
誰でもできる耐震診断!
耐震診断の流れは、先程話した通りになりますが、実際に業者など依頼するとなると、5万円から15万円程度の費用がかかってしまいます。
ですから、その前に、耐震診断を行う必要があるかどうか、自分の目で「簡易診断」を行なってみると良いと思います。
https://www.nittaibou.jp/index.php より
- 🔲 窓の周りの外壁にヒビがある
- 🔲 基礎のひび割れや欠けができている
- 🔲 床をパチンコ玉・ビー玉が転がる
- 🔲 シロアリの被害を受けたことがある
- 🔲 近く(敷地から10 ⅿ以内)に川がある
- 🔲 ドアや襖の開け閉めがしにくい
- 🔲 新築後、アンカーボルトを点検したことがない
- 🔲 押入れの中にカビを発見したことがある
- 🔲 1階に店舗や車庫がある
- 🔲 屋根の瓦が重い
- 🔲 増改築を行った
- 🔲 床下の土台に腐朽が見られる
- 🔲 階段の上り下りに揺れを感じる
- 🔲 基礎の高さ40㎝以下である
- 🔲 近くの道路を大型車が通るとサッシがガタガタなる
- 🔲 吹き抜けがある
- 🔲 壁が一方に偏っている、または壁が少ない、壁全長の1/5に満たない面がある
- 🔲 地震情報より揺れ大きく感じる
- 🔲 (役所の)完了検査を受けていない
- 🔲 昭和56年以前に建てた家である
- 🔲 強風が吹くと揺れを感じる
☑ が3個未満=問題ありません
☑ が3個から7個=調査の必要があります
☑ が8個以上=精密検査と補強対策を考えましょう
こちらの診断用リストは、「日本耐震防災事業団」が作成した簡易診断リストになります。
見てお分かりの通り、簡単な質問に答えるだけで、およその耐震レベルの判定ができるようになっています。
何も目視で確認できるか、暮らしていれば直感的に答えられる質問ばかりになります。ですのでぜひチェックしてみてください。
状態が悪い場合は精密診断を!
簡易診断リストでチェックしてみて、該当箇所が3個以上あった場合には、専門家に耐震診断を依頼することをオススメします。
一般診断の場合、簡易診断と同様に目視で行われますが、一般の人には難しい、床下や天井裏に入り込んで骨組みの様子を観察するなど調査を行います。
もし簡易診断リストで、該当の箇所が8個以上あった場合には、はじめから「精密診断」を依頼しましょう。
一般診断は一般の建築士や工務店でも行えますが、精密診断は家屋の構造の専門知識を持った建築士が行うのが一般的になります。
そして精密診断は、床板や壁紙を一部剥がすことになりますが、軸組などの状況まで精密に調べることができます。
耐震補強計画を立てる
耐震診断の結果をもとに、具体的にどの部分をどのような方法で補修するのかを専門家に考えてもらうのが補強計画になります。
その際、多くの人は「せっかくだからどんな地震にも耐えられる家にしたい」と考えると思います。ですが中には、「ある程度壊れるのは覚悟しているが、命に関わるような倒壊は避けたい」と考える人もいると思います。
確かに、全ての地震に無傷で耐えれる家というのは、当然、費用も莫大な額がかかってしまいます。
耐震工事する予算だって、限りがあります。予算が決まってなければ、業者の方も補強内容を提案することだってできません。
また、補強工事の間、家を離れて暮らすのか、それとも住みながら工事を行うのかなども選択肢が出てきます。
仮に家を離れる場合、時期や期間も考慮する必要があります。
そのため、補強工事をする前に必ず専門家の方と相談しながら補強計画をすることが重要になります。
住宅性能表示制度と耐震工事
実際に耐震改修を行うことになった場合は、せっかくですからより耐震性能を高めておきたいところです。
耐震性能は2000年に制定された住宅性能表示制度により3段階の等級が定められ、その等級によってどの程度地震に耐える力があるかという耐震力を測ることができます。
https://www.mie-jsk.or.jp/concept/sonae/ より
まず最低限となる現行の建築基準法で定められた耐震力であれば等級1、その1.25倍の強さであれば等級2、1.5倍であれば等級3となっています。
耐震力が1.5倍と言われてもそれがどの程度かピンとこない人が多いと思います。
そこで非常にわかりやすい例として、2016年の熊本地震による被害状況をあげてみます。
https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf より
上の図からわかるように、建築基準法レベルの等級1とその1.5倍の耐震力である等級3を比較していますが、等級3ではの被害が9割近くと圧倒的大多数を占め、倒壊した建物は0となっています。
そのため、もし予算に余裕があるのであれば、等級3レベルまで耐震力を引き上げ、是非この「無被害」を目指して頂けたらと思います。
地震による被害を受けてから修理費用が必要になるよりも、先手を打って被害を抑える方が結果的に費用も安く済むかもしれませんし、何より安心して家に住むことができます。
また、既存住宅用の住宅性能表示制度を利用することにより、地震保険料の割引を受けられる場合もあるので確認してみてください。
まとめ
日本に住む以上は地震とは切っても切れない縁になります。
家が地震で倒壊する前に必ず自分の家の状況を理解することが重要になります。
今回のような簡単な自己診断でも問題はありません。確認するということが安心して暮らせる家の第一歩だと思います。
こんなことを言ってしまったら意味がないですが、もし相当不安ならばお金を払い専門の業者に頼むのも選択肢に入れて良いと思います。
倒壊してしまってからでは遅いです。手遅れになる前に皆さんも自己診断を試しにやってみたらどうでしょうか。