住宅といえば、「人と違ったおしゃれな家をつくれる」というイメージを持つ人は多いと思います。しかし、自由度が高いのはデザインだけではありません。
家の性能もまた、ある程度自由に設計することが可能です。デザイン、コストと並び重要な、住宅の性能。そこで今回は、温熱環境と断熱性能について紹介していきたいと思います。温熱環境と断熱性能は人の健康に密接に関係するので、是非重視したいポイントになります。
温熱環境について、興味ない方も興味ある方も一度、しっかり考えてみましょう。
住宅における「性能」
住宅における性能は、以下の5つによって分けられます。
- ①耐震性 建物の構造体の部分
- ②耐久性 耐候性、雨仕舞→雨漏りなど防ぐ部分
- ③メンテナンス性 維持管理・修繕・更新がしやすい工夫
- ④温熱環境 断熱、パッシブデザイン、空調計画
- ⑤省エネ性 建物の燃費、光熱費、太陽光などの創エネ
個人的な感想になりますが、デザインよりもまずこれらの5つの性能にバランスよく配慮した設計が、幸せな暮らしにつながると考えています。
住宅社会によって特に大きな差が出るのは、断熱性をはじめとした「温熱環境」へのこだわりです。
理由としては、耐震性などに関しては、地震大国日本においては、大きな地震がある事に基準や精度がアップデートされています。ですが、温熱環境に関しては2021年現在、過去20年間ほど基準や精度がアップデートされていません。そのため、「温熱環境」をこだわることで他の住宅との差を出すことができます。
温熱環境は健康で幸せに暮らすうえで欠かせない要素なので、是非家づくりの際意識してほしいポイントになります。
「あたたかい家」が家族の命を守る!
「あたたかさ」は私たちが住むうえ重要なポイントになります。寒さというのは、実は私たちの体にかなりの悪影響を及ぼすことが分かっています。
手足の冷えや、アレルギー、睡眠不足などの不調の原因にもなります。暖かい場所から急に寒い場所に移動すると、血圧や心拍の急激な変化がおき、それが脳梗塞や心筋梗塞の引き金となるリスクがあります。
また、室温が18°以下になると、循環器の疾患や怪我のリスクが上がり、WHO(世界保健機関)は住宅内の最低室温を18°以上にすることを強く勧告しています。
住宅内で人が亡くなるのは冬が多く、急激な血圧の変化などによる「ヒートショック」がその最たる例になります。
ヒートショックで亡くなる人は、年間約17000人 (東京都健康寿命医療センターパンフレットより)、交通事故で亡くなる人は、年間約3000人(警察庁統計 令和元年・2年)、このように、ヒートショックで亡くなる人は、交通事故の5倍以上の方が亡くなられています。
このように、あたたかな家は、冬にも快適に過ごせるだけではなく、家族の命と健康を守ってくれると考えてもいいと思います。
断熱材の選び方
家の性能についての検討に入ると、断熱性や気密性といった言葉が出てきます。
断熱や気密についての細かい話は、非常に難しい領域であり、徹底してこだわりたい人を除いて、そこまで深く勉強する必要はないと思います。
「できるだけ暖かい家がいい」などというオーダーを叶える手段として、設計者が断熱や気密の構成を考えてくれるはずです。
ただ一つ注意しなければならないのは、性能について尋ねた際に、「○○という商品を使えば、断熱は完璧です」というような営業トークをする会社です。
断熱材の性能は、「断熱材の熱の通しにくさ」と「断熱材の厚み」で決まります。高性能の断熱材も、薄ければ熱を逃がしやすくなります。
また、断熱性能は断熱材だけではなく、内装仕上げ材(壁紙など)防湿気密シート、構造用面材、通気層、外壁下地、サイディングといったものの組み合わせで総合的に決まります。
ですので、断熱材の性能ばかりをしてくる会社は、正直言ってしまえばあまり優良な会社とは言えないと思います。
グレードアップした方がいいのか?
住宅の断熱に関しては一定の基準が存在し、住宅会社もそれをベースに断熱性能を設定することが多いです。
国の定める断熱基準が1999年からアップデートされていないこともあり、近年目指すべき水準として使われているのが「HEAT20(20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会)」が掲示するグレードになります。
Heat20が設けたG1、G2という基準は、国の基準よりも高い水準になります。住宅において、断熱性能の目安として「国の基準、G1、G2」という3つがあると知っておくといいと思います。
何もオーダーしなければ、断熱性能は基本的に国の基準並となりますが、よりあたたかな家を望むなら、 G1、G2 とグレードを上げることになり、追加でコストが上がる可能性も高くなります。
ただ、断熱性能を高めることで、設置するエアコンの台数が減ったり、ランニングコストを抑えられたりして、いずれ初期投資は回収できると考えられます。
加えて長く健康で快適に住み続けられるというメリットもあるので、G2レベルを目標とし、最低でもG1レベル以上にしておくことをオススメします。
新築ではなくても、断熱性能上げられる
まず断熱材はどこにあるかというと、壁の中や床下、天井裏など、室内と室外の境界部分の通常仕上げ材に隠れて見えない場所に入っています。
ということは、新築と同じ仕様に作り直そうとすれば、仕上げ材をはがしてまた元に戻すなどの工事も必要になり、断熱工事以外に余計な費用がかかってしまいます。
しかし、リフォームはいくらでもお金をかけられるわけではありませんから、費用対効果も考えなければなりません。
幸い、断熱性能は全部を完璧にしなければ性能を発揮できないということではなく、部分的な断熱補強工事でも、ある程度全体の性能引き上げて行くことは可能です。
そこで、コストパフォーマンスを重視し、できるだけ既存を壊すことなく部材の追加や交換だけでできる断熱リフォームをオススメします。
各部材のリフォームについては、また後日詳しく話していきたいと思います。
まとめ
温熱環境や断熱性能は、省エネ法の改正により、これからの住宅には高い性能が求められるようになると考えられます。温熱環境を見直すことにより、家の快適さに加えて、健康面やコスト面でも大きなメリットがあると考えられます。
ですので、私からは住宅のデザイン以上に、温熱環境を重視することを強くオススメします!お子様からお年寄りまで、快適に暮らせる住宅を目指していきましょう。