年を取らない人はいません。老いは必ず訪れます。最近は「人生100年時代」とも言われ、長生きを「リスク」と捉える風潮もあります。
しかし、人として1日でも長く生きられるなんて素晴らしいことですよね?
なぜそれがリスクになると思いますか?長生きがリスクになるか幸福になるかは、備えが足りているかどうかにかかっていると思います。
今回は、その中でも「自宅を備える」ということに焦点を当てて話していきたいと思います。安心した老後を迎えるために「備える・行いたいリフォーム」で自宅を備える方法を考えていきましょう。
手すりの設置
体のバランスを崩したときに頼りになるのが手すりになります。家の中では段差を乗り越えるときや、姿勢を変える時がバランスを崩しやすい所になります。
玄関の上がり框、階段、掃き出し窓からの出入り、トイレの立ち座り、浴槽に入る際のまたぎ
特に、階段の手すりは2000年以降の建物には法律で設置が義務付けられています。階段からの転落は思わぬ怪我にも繋がりますので、ついていない場合は早めの設置をオススメします。
体の状態によっては廊下や居室にも連続した横手すりが必要になることもありますが、横手すりなら特別な下地補強の工事をしなくても、柱などの構造材を利用して取り付ける方法があります。
不要な手すりはかえって邪魔になる場合もあるので、連続手すりは必要になった時に設置するというスタンスで大丈夫だと思います。
手すりの設置はもちろんですが、足を踏み外さないように階段の踏み板にノンスリップ(滑り止め)をつけたり、階段の色を周囲の床材よりも明るい色や濃い色などにして目立たせるなどの配慮も有効な手段だと思います。
転倒や転落によって骨折したことがきっかけで、歩行が困難になってしまう場合があります。ちょっとの配慮で防げる事故も多いので、参考にしてください。
床段差の解消
昔のドアは、床に「沓摺(くつずり)」と呼ばれる1~2㎝の段差がありました。
この程度の段差は健常な時には何も意識しませんが、怪我や障害などが原因となり、すり足で歩くようになると、これが引っかかりやすい段差となります。
トイレや和室にも数センチの 段差がある場合もありますが、いずれも床のリフォームを行うついでに段差をなくすことが可能です。
段差を乗り越えるという動作は必ずしも悪いことではなく、体力を維持するためにはむしろ段差はあった方がいいという考えもあります。
ただ、数センチのわずかな段差は歩行中の転倒の原因となりやすいため、リフォームのサインできるだけ解消しておくといいと思います。
収納を手の届く高さに設定する
老後の収納を考えるなら、高さに配慮したいところです。というのも、70代頃から腕の可動域が狭くなり、吊戸などの高所は荷物の出し入れが大変な作業になってしまうからです。
また、床下収納も出し入れの姿勢は腰などに負担が大きく、辛くなります。
収納は高さが重要で、上限が目の高さ、下限が膝の高さを目安に収めておくと長く便利に使い続けることができます。吊戸を撤去すれば天井面が広く見えるため、部屋全体を広く感じられるようになります。
リフォームは断捨離のチャンスです。この際思い切って不要なものを処分し、コンパクトな収納に変えるのもいいかもしれません。
照明の明るさを強化
加齢とともに必要になってくるのが、照明の明るさになります。20歳を基準にすると、60代を過ぎると、2~3倍もの明るさが必要になると言われています。
照明計画を変更するには、壁や天井の裏に隠れている電気配線も変更する必要がありますから、壁紙を張り替えるついでに照明計画を見直しておきたいところです。
照明は全て明るくするよりも、キッチンの手元、食卓、作業台や机の上、玄関など、作業が必要な場所をスポット的に明るくするのが効果的になります。
また、階段や廊下の危険防止として、足元に暗くなるとセンサーで自動点灯するフラットライトなどを設置する方法もあります。
出入り口を広く、引き戸へ変更
リフォームで室内の建具を交換する予定があれば、開口部の幅はできるだけ広く可能であれば引き戸に変えることをオススメします。
引き戸では手前に引く際には一旦後ろに下がる動作が必要で、障害の程度によっては後ずさりが難しくなる場合もあり、また車椅子対応という点でも引き戸は優れています。
開けっ放しでも邪魔にはなりませんし、引き戸は誰にとっても使いやすいです。ドアから引き戸に簡単にリフォームできる商品もありますので、もし少しでも考えているのなら、施工業者に相談してみるといいと思います。
ただし注意して欲しいことがあります、今よりも開口を広げたり、壁を撤去し新しい開口を設ける場合は、耐力壁かどうかの確認をしなければ安易に行うことはできません。
壁や開口部の位置を変更する場合は、必ず建築資格を持った設計士に検討してもらうようにしましょう。
トイレの改修
トイレは毎日必ず使う場所だと思います。1回も使ったことがないという人はいないと思います。
高齢期にトイレで問題になるのは、出入り口が狭い場合です。体調を崩した時などに介助者に手伝ってもらうというケースは意外に多く、入り口が狭く奥に細長い一般的なトイレでは、これが非常に困難な場合があります。
この手のトイレに有効なのは、出入り口の方向を変更し、できるだけ開口幅の広いドアにすることです。
この場合も壁や柱などの構造体の変更が伴うため、先ほどの引き戸への変更と同様に、必ず建築資格を持った設計士に構造を検討してもらいましょう。
また、立ち座りの支えとなる手すりも一本つけておくと安心です。
お風呂の改修
現在のお風呂が出入り口に10センチ以上の床段差がある場合は、ユニットバスにリフォームすることで床段差を無くすことが可能です。
また、ユニットバスに断熱材をオプションで追加すれば、家全体の断熱工事まではできない場合でも、浴室だけを温かい空間を作ることができます。
お風呂は介護者と一緒に入ることを想定し、トイレと同様に出入口は開口幅が広めの引き戸にしておくと安心です。
ユニットバスの手すりは必要になった時に後付が可能ですが、シャワーの高さを自由に設定できるシャワーバーが手すりを兼ねる商品もあり、浴槽へ入る際の支えにもなり安心です。
介護できる住環境
今回も、少しだけ話には出ていましたが、介護への備えについてもリフォームにおいて重要になります。病気や怪我などで要介護状態になった場合にも対応ができるよう、住環境を備えておくと良いと思います。
要介護状態になる時は、「そろそろだな!」と準備できることは少なく、脳や心疾患などの急な症状の悪化や、偶発的な事故による後遺症など、ある日突然に訪れるケースが多いものです。
その場合、入院や手術など対応に追われて自宅のリフォームのことなど考えている余裕は間違いなくないと思います。
しかし、いざ退院となった時、住環境が整っていない為に自宅での介護は不可能となり、介護療養型医療施設などに入りざるを得ないというケースも少なくないです。
- 一階に、寝室にできる部屋を設ける
- 寝室からトイレまでの導線を確保する
- 道路から寝室まで、車椅子で通れる経路を設ける
全てのリスクに備えるのは難しいですが、先ほど話したリフォーム内容に加え、最低限これだけは備えておきたいポイントを挙げておきました。
まだ先のことだと思う方もいると思いますが、頭の隅にでもこのようなことを入れておくと、後々のためになると思います。
まとめ
「備えあれば憂いなし」とは素晴らしい言葉ですよね!
困ってからでは遅いです。事前に備えることで、老後や要介護になった時、安心・安全に暮らせるマイホームにすることが重要だと考えます。
今回の話で、少しでも「老後のためにリフォームしてみようかな?」と思ってくれると幸いです。もちろん、リフォームするのは多額の費用がかかります。
リフォームは自分の予算と相談して、無理のないマイホームづくりを意識して下さい!