住宅・敷地の隣人トラブルを未然に防ぐ法律知識を紹介!

  • 2021年7月2日
  • 2021年9月4日
  • 住宅

一戸建て住宅を購入した際、隣人との関係性も重要になります。隣人との関係がよくないと暮らしに支障が出てしまい大きなストレスを抱えてしまいます。

「騒音トラブル」「臭いのトラブル」などの小さなトラブルから、「敷地」「建物」の大きなトラブルまで種類は様々あります。小さなトラブルなら、話し合いで解決することもありますが、大きなトラブルは法的措置をとる場合が多いです。

その場合、建築についての法律を理解しているのとしてないのでは、有利性が少々変わってくると思います。そこで今回は、「敷地」「建物」のトラブルを未然に防ぐ法律知識を紹介していきたいと思います。

境界線付近の建築制限を理解する

敷地の境界線付近で建物を建てる場合には、様々な制限が存在します。建築を希望するのが自分か隣人か、それとも共同かなどによっても、該当するケースが異なってきますが、大まかには今から説明する5つを押さえておけばいいと思います。

①隣地斜線制限

隣地境界線に接して建物を建てる際には、住居地域では建物の高さが20m を超える場合、商業地域・工業地域では31m を超える場合に制限されます。

 

②北側斜線制限

第一種・第二種低層住居専用地域では5m 以上の建物、第一種・第二種中高層住居専用地域では10m 以上の建物が対象になります。

 

③日影規制の制限

建物の高さが7m以上か、地上3階建て以上の中高層建物が対象になります。

 

④民法上の制限

民法では、敷地の境界から外壁まで50㎝以上離れていなければなりません。ただし、建物が密集した市街地では、これと異なる慣習があるとして、50㎝以上離さなくてもよいとする判例もあります。

防火地域や準防火地域内で外壁が耐火構造の場合には、境界線接して建てることができます。

 

⑤第一種・第二種低層住居専用地域の制限

第一種・第二種低層住居専用地域においては、都市計画で、外壁の後退距離を1m または1.5m 定めている場合があります。

 

これら5つを名前だけでもいいので、覚えておきましょう。今回は少しだけ、これらを踏まえた上で、着眼すべき点を紹介していきます。

まず、市区町村の建築課あるいは都市計画課で、住んでいる地域が用途地域のいずれかに当たるかを確認しましょう。もし、防火地域や準防火地域に指定されていれば、境界線ギリギリに建てられても文句は言えません。

しかし、第一種住居地域で、外壁の後退距離が定められている場合は、境界線から1mまたは1.5m離して立てるように要求することが可能です。

防火地域や準防火地域でもなく、または外壁の後退距離が定められていない場合は、民法の規定により、50m後退するように要求が可能です。

この要求ができるのは、建物の工事に着手してから一年以内で、建物が完成するまでです。要求が拒絶された場合は、裁判所に工事差し止めの仮処分の手続きを申請することになります。

塀をつくる場合の問題は「高さ」「費用」

高さの制限

境界線の上に塀を作る場合に問題となるのが高さになります。

まず、も建築基準法上の「建築物」にあたることを理解しておきましょう。その高さが、「北側斜線制限」「日陰規制」の規制の対象となるのであれば、違法建築として、行政指導や改善命令の対象となります。

他に、塀の高さについて定めている民法によれば塀の高さは、三つの条件で決めることができます。

 

  • 隣人同士が話し合って決める
  • 話し合いがつかない際は2m とする
  • ただし、それ以上の高さのものをつくりたい人は、増加する費用を負担して高くすることが可能。

 

とはいえ、どんなに高くてもいいというわけではありません。他人の家の日当たりや通風を妨げる場合には、正当な権利の行使と認められないことがあります。

費用負担の問題

費用の問題については、民法が規定しています。「費用は隣人同士が折半で負担」「材質は、板彫りか竹垣」と明記されていますが、世間一般で使用されている普通の材質と考えればいいと思います。今では、ブロック塀やスチール製のものが一般的になります。

ただし、塀が古くなってはいるが、それほど傷んでおらず、倒れる危険もない、というものであれば、客観的に見て立て替える必要はないと判断できます。その場合にも建て替えることはできますが、費用は立て替えを希望する側の自己負担になってしまいます。

メンテナンスフリーな目隠しフェンス 宮崎市 K様邸
https://www.ge-kobo.co.jp/ より

また、塀を建て替える権利はあっても、相手が同意していないのに勝手に工事をしていいかという問題があります。老朽化がひどい場合には、共有物の保存に関する行為として、特別の手続きがなくとも工事をすることが可能ですが、そうでない場合は、いきなり工事をすることはできません。

話し合いで解決しない場合は、裁判所に調停の申し立てをすることになります。

窓・ベランダのプライバシー保護

境界線付近の窓やベランダは、プライバシー保護という観点から、民法によって規制されています。

それによると、敷地境界線から1m以内にある建物に他人の敷地を見ることができる窓や縁側(ベランダ)を設けるときは、「目隠し」をしなければなりません。

1mというのは、境界線に一番近いところから測るので、ベランダなどで出っ張りがある時は、でっぱりの部分ということになります。

隣人がこの制限に違反する建物を建てる場合には、制限内にするように要求できます。もし、これに応じてもらえなければ、防護策として、高い塀を建てるということも考えられますが、そうすると塀の高さの制限が問題になってきます。そう考えると、裁判所に裁定を仰ぐことになると思います。

樋・屋根から流れる雨水の問題

隣の庭から自然に流れ込む雨水に対しては、文句を言うことはできません。民法でも、隣地から自然に流れてくる水の流れを土地の所有者は妨げることはできないとしています。

しかし、樋や屋根から流れてくるような人為的原因による流水は我慢する必要はありません。水が流れ込まないように設けることを隣人に請求することが可能です。

もし、水が流れてくることによって庭木の根が腐ったり、家の土台を痛めるなどの被害を受けている時は、庭木の代金や土台の修理に要した費用などの損害賠償を求めることが可能です。

隣人が話し合いに応じないようなら、裁判所に調停等を申し立てて解決することになります。

境界線に関する争いは協議内容の記録も大切

公図を信頼して土地を買った後で、隣人から境界線についての争いが持ち込まれるというケースもあります。登記所と市区役所、町村役場には、公図という土地の図面が保存してありますが、測量技術が十分に発達していなかった時代に撮影したものがあったりして、完全に正確なものであるとは限りません。

トラブルを防ぐためには、土地家屋調査士に測量依頼し、その測量の結果に基づく境界の承認を、隣人からももらうことになります。承認が得られない時は、隣人との協議によって解決を図ることになります。

ただしその場合は、面に話し合いの条件や結論を明確に記載し、後日のための証拠として残しておくことを忘れないでください。話し合いがつかない時は、裁判所に境界線を画定してもらうことが必要になります。

なお、土地を不動産業者を通じて購入した場合には、業者に対して損害賠償の請求をすることが可能です。

まとめ

住宅での隣人トラブルは、話し合いで解決することが一番良いのですが、そうもいかない場合もあります。その場合のためにも、最低限の知識を身につけることをお勧めします。

一戸建ての場合、隣人との関係は良好な方が良いと思います。マンションやアパートの違い境界線が関係してくるので非常にややこしく難しいですが、少しずつ知識をつけていくと良好な関係が維持できると思います。

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